スティーブ・ジョブズや無印良品が好きな私は、ミニマリズムに憧れるミーハーなデザイナーです。
とかくシンプルで最小限のデザインこそ至高、なんて思ってしまいがちです。しかしファッションディスプレイ業界、特にハンガーデザインにおいてはそれでは仕事になりません。もともと洋服をかけるというシンプルな機能の道具に、いかにデザイン性を付与するかが命題な訳で。
しかし最近は、「とにかくシンプルで、普通のハンガーがほしい」なんていう相談を受けることが何度もありました。そこで私たちは「最もシンプルなハンガー」を商品化してみることにしました。そこで改めて、「シンプルなハンガーって何?」と考えたことをコラムとして書いてみます。
ちなみにここでいうハンガーとはアパレルショップで洋服の陳列に使われるものです。いわゆる業務用ディスプレイ用ハンガーなんて呼ばれています。洗濯用ハンガーでも収納用ハンガーでもありません。

シンプルではないハンガー

上の写真はシンプルではないハンガーの例です。シンプルではないというのは悪い意味ではなく、しっかりデザインされた素晴らしいハンガーです。素材、形状、仕上げなど様々な特徴があります。それぞれがブランドのイメージや洋服の形状に適した形をしています。また、ショップ内装に合わせて色や素材感を選ばれたりもしています。また、各ブランドのロゴをフェイスに印刷しているものが多いですね。
これらのハンガーはそれ自体がブランドイメージや高級感を主張するものもあります。あるい逆にショップごとの内装に馴染ませて主張を抑えるものもあります。お客さんがなるべく商品である洋服にフォーカスするために。

 

シンプルって何??

いきなり哲学的になりますが。一般的には「単純」と訳されると思います。つまり特徴的な見た目や特殊な機能がない、一般的なものを「シンプル」というのでしょう。だからと言って何十年も変わらないわけではありません。ファッションディスプレイ業界においては特に。時代によって服の形状や素材感のトレンド、また店舗のオペレーションやレイアウトの在り方が変わっていきます。当然それに合わせてハンガーにとっての一般的、すなわち「シンプル」も変わっていくものです。30年前に「シンプル」とされていたハンガーのデザインが今見ればクラシックスタイルの特徴的なものに感じるでしょう。トレンドをある程度反映しているからこそ、シンプルなハンガーであると認識されるのです。そしてシンプルなハンガーは自身が主張せず、商品である洋服にフォーカスさせます。それでいてトレンドのシルエットを反映しているから、洋服の形状もきれいに見せることができるのです。

 

最もシンプルなハンガー

さて前置きが長くなりましたが、本題に。私たち日本コパックが考えた最もシンプルなハンガーの紹介です。その名も「CS(Copack Standard)シリーズ」。これが「シンプルなハンガーって何?」に対する私たちなりの答えです。上の写真がそのCSシリーズの6型です。形状や素材については後ほど解説しますが、まずは型の種類について。かなり絞り込んでも6型になってしまいました。それは用途によって型を使い分けるからです。これについても最もシンプルな使い分けを想定しています。

 

シンプルな使い分け

おおざっぱにいうと、一般的にアパレルショップでは3タイプのハンガーを使います。
1.ジャケットハンガー:ジャケットやコートなど「重衣料」をかける厚めのハンガー
2.シャツハンガー:シャツ、カットソー、Tシャツなどの「軽衣料」をかける薄めのハンガー
3.ボトムハンガー:ズボン、スカートなどのボトムスをかけるハンガー
これが最もシンプルな使い分けでしょう。
メンズとウィメンズでは肩幅が違うため、ジャケットハンガーとシャツハンガーはメンズとウィメンズで違う型となります。当然、メンズとウィメンズの両方の扱いのあるショップではそれらを使い分けるわけです。
場合によってはジャケットハンガーとシャツハンガーを兼用したり、極端な場合メンズとウィメンズも同じ型を使うショップもあります。それによって店舗でのオペレーションの簡略化やハンガーの数量管理、コスト削減などのメリットがあります。
反対にスーツ用、Tシャツ用などさらに多くの種類を使い、より商品それぞれのディスプレイのきれいさを重視するショップもあります。

 

素材

ハンガーの素材として、木かプラスチックが一般的です。プラスチックハンガーは主にコスト優先で量販店などで使われることが多いです。木に比べて素材感で見劣りします。金属はその質感を活かしたクールな表現で使われたりしますがそれほど一般的ではありません。その他にも透明アクリルハンガーみたいな変わり種もあります。CSシリーズでは一般的で素材感もいい木を材としています。
また、木製ハンガーに使われる木も何種類もあります。代表的なものがビーチ材(ブナ材)です。北欧家具の木材として使用されることも多い、ムラのない美しい木目と傷つきにくい適度な硬さを併せ持った、ハンガーにとって理想的な木材です。CSSシリーズは基本的にこのビーチ材を使用しています。
次に一般的なのはロータス材と呼ばれる比較的柔らかい素材です。これはコストは安いものの傷つきやすく、また耐久性にも不安があるため、業務用(店舗用)にはあまり向いていません。もし激安で販売されている木製ハンガーを見かけたら要注意ですよ。使ってるうちに傷や凹みが多くなって安っぽく見えてきます。

 

仕上げ

木製ハンガーは仕上げ次第で全く違うものになります。今回は3つの仕上げを紹介します。
CSSシリーズの仕上げは究極のシンプル、素地磨き仕上げ。要するに木材を削って形状を作り、磨いてから一切のコーティングをしない、まさに木肌を活かした仕上げです。単純な仕上げのようですが、実は磨き傷やムラが目立ちやすく難しい仕上げ方。逆にコーティングする方が工場としては簡単なのです。しかし、職人たちの繊細な磨き作業を経た素地のハンガーは、木本来の美しい木肌と滑らかで温かみのある手触りで、唯一無二の素材感となります。
CSWシリーズの仕上げはつや消し白塗装。塗膜強度のあるウレタン塗装を採用しており、高級感のある仕上がりです。
CSBシリーズの仕上げは黒のつや消しラバー塗装。塗膜強度のあるウレタン塗装にラバー成分を配合することで、独特の質感を実現しています。通常のラバー塗装と比べてほこりがつきにくいマット仕上げです。

形状

形状に関しては多くのマニアックなポイントがあって語りつくせないのですが、代表的な部分だけでも。まず肩の傾斜(首元から肩先に向かっての傾き)についてです。これは洋服の着映えやシルエットにダイレクトに影響します。これは時代ごとに洋服のシルエットのトレンドを追いかけるように変化しています。2018年現在の傾向でいうと、少し前までは極端ななで肩を求めるブランドも多かったですが、最近は男女とも標準的な傾斜が好まれているようです。稀にハイブランドでイカリ肩なハンガーも見かけますが一般化はしないでしょう。
次に厚みについて。一般的にハンガーは厚い方が洋服が型崩れしにくく、着映えもよい、とされることが多いです。実際の人間の肩は厚みがあるので、それに合わせてパターンを作る服はもちろんその方がきれいに着るはずですね。高級感も得られます。一方薄いハンガーは同じスパンのハンガーラックに多く陳列できるというメリットがあります。ファストファッションの台頭で単価が下がり、陳列効率アップを求められる昨今では薄めが求められる傾向にあります。もちろんハンガー自体の単価も薄い方が安くなりますので。それを追求するあまり、ジャケットやコートも薄いフラットハンガーにかけるショップもあります。それではさすがに見た目が安っぽく見えるだけでなく、陳列によって肩崩れしてしてしまう心配もあります。そこでCSシリーズでは、薄めではあるものの湾曲と肩厚を作り、きれいなシルエットと型崩れ防止を実現できる絶妙に現代的な厚みを実現しています。
最後に、フェイスの上部、頭(フックが挿さっている面)の形状について。CSシリーズは最近のトレンド、というより定番化してきている角頭(フラットな天面で左右に角ができる形状)を採用。これについては着せ感に直接影響しない見た目の問題ですが、ミニマルなフックと相まってスッキリ見えます。

 

ボトムハンガー

ボトムハンガー(ズボンやスカートをかける)は2タイプあります。CS-401はサイドクリップ式。機能を極めた最小限のデザインで、ほとんどのショップがこのタイプのボトムハンガーを使っています。CS-408はクリップ幅を調節できるタイプ。商品に合わせてベストな位置で挟んで吊るすことができます。どちらのタイプもシンプルな見た目で、ジャケットハンガー、シャツハンガーとの相性もバッチリです。
ボトムハンガーは通常、ウィメンズ、メンズで使い分けせずに同型を使います。そのためCSシリーズでも性別で分けておりません。どちらのタイプも男女とも違和感なくお使いいただけます。

さいごに

最もシンプルなハンガーを作ろう、ということから始まった今回のシリーズ。完成してみると、機能美と木の素材としての魅力を併せもった、とても素敵な仕上がりとなりました。手前味噌ですがどんなショップにも馴染むような自然な存在感です。ショップ以外に、家庭のクローゼットでも使いやすいデザインだと思います。実は私も自宅ではこのハンガーを使っています。
こちら日本コパックの通販サイト、SHOP COPACKからご購入いただけますので、ぜひご覧ください。一般の方もお買い求めいただけます。https://shop.copack.co.jp/